副業における雇用形態(パート・アルバイト、人材派遣)と請負形態(受託事業)の相違

副業と言っても多いのは副収入を目的に本業の勤務時間外に行うアルバイトやパートなどではないでしょうか。人材派遣でも副業者を対象にした土日業務なども多いのが現状です。Wワーク可能として募集しています。これらは雇用される形態での仕事です。

一方雇用されない形態で請負業という分野があります。デリバリーなどの仕事では配達する荷物の量に応じて出来高で支払いが行われている場合もあります。在宅ワークの仕事では作業時間も自由で納品もオンラインで行う形態で、納品により仕事が完成するというものです。雇用形態と請負形態では大きな違いがあります。あいまいな形で人材募集集がされている場合もあり、請負では実態が労働者でも事業主と扱われ、リスクを労働者側が負う危険性があることなども知っておくべきでしょう。

1.雇用形態の副業

雇用形態の中では、企業などでの直接雇用と人材派遣会社に雇用される人材派遣があります。

(1) 直接雇用

直接雇用とは、正社員、契約社員、パート、アルバイトといったさまざまな雇用形態で、企業が直接労働者を雇用する形態です。

パートは、長期など継続的に一定時間を限定して働く形態です。期間を定めた有期契約と期間を定めていない無期契約があります。有期契約では年間契約で1年単位に更新している場合などがあります。

アルバイトは、基本的に短期間働く形態です。店舗の顧客の多い休日や企業の繁忙期に限定して行っている場合があります。

契約社員は、パートよりも労働時間が長く基本的に社員に準じたフルタイム勤務です。中高年人材の採用などで見られるのが一般的で、ほぼ社員と同様の仕事をしているケースが多くあります。しかし、ボーナスがない点、昇給がないか少ないなどの賃金格差問題があります。契約社員は有期契約が中心です。

いずれも直接採用ですから採用の選定、賃金決定・昇給、職場の異動などは採用企業に決定権があります。

直接雇用の給料の締日と支払い日では、給料の締日は当月の15日や20日で支払い日は25日が一般的です。通勤交通費は支払われます。有給休暇は契約社員、パートもあります。パートは勤務日数、時間で一定の基準があります。社会保険はパートでも勤務日数によって適用される場合があります。

(2) 人材派遣

①人材派遣とは

人材派遣とは労働者派遣法に基づく働き方で、まず働く人=労働者は人材派遣会社に登録し、派遣会社を派遣元とし派遣先の企業に出向いて仕事をします。派遣先企業は派遣労働者に直接仕事の指揮命令関係を持ち、仕事の指示や服務指導等を直接行うことができます。

雇用関係は派遣労働者と派遣元の人材派遣会社との間のみあり、派遣会社が人材の採用選定、労働条件提示、給与支払いなどを行います。重要なポイントは、派遣先企業が派遣労働者に対して、直接採用の選定、賃金決定・昇給、職場の異動などを行うことができないことです。その点では派遣労働者は労働条件面では守られていると言えるでしょう。また、直接雇用では当たり前の通勤交通費が人材派遣では出ない場合があります。時給に交通費も含まれている解釈になります。人材派遣の給料の締日と支払い日では、人材派遣の場合は派遣会社により異なる規定によって行われています。派遣先企業から派遣元人材派遣会社への支配日の影響もあります。また、日払いの人材派遣会社の制度もあり、派遣会社の給料の立替制度になります。

②人材派遣の形態

登録型派遣、常用型派遣、紹介予定派遣の3種類の形態があります。副業として関係するのは登録型派遣です。登録型派遣は派遣会社が仕事を紹介、就業決定し、派遣先企業と派遣会社間で結ばれる派遣契約期間だけ、労働者は派遣会社と雇用契約を結ぶ形態です。派遣期間が終了したら雇用契約は終了となります。常用型派遣は、派遣会社の社員として常時雇用される形態です。紹介予定派遣とは、派遣労働者と派遣先企業の双方に合意があれば、派遣契約期間終了後に、派遣先企業の正社員や契約社員などの直接雇用に切り替わる形態です。

③人材派遣が禁止されている仕事

労働者派遣法及び施行令等によって、一部の業務は労働者派遣が禁止されています。 

港湾運送業務、建設業務、警備業務、医療関係業務、いわゆる士業(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士等)などが禁止対象業務です。

2.請負形態の副業

請負形態の仕事は作業を行う請負者に働き方は基本的に任され仕事の納品により完結するものです。仕事により異なりますが、作業する場所、作業する時間は請負者に任されている点があります。例えば、住宅の建築関係や営繕関係では顧客の自宅が作業場所になり、時間も顧客の迷惑に掛からない時間とある程度特定される要素はあります。逆に在宅ワークが可能なパソコン、インターネットでの仕事では、自宅などでも可能で作業場所の制約はなく作業時間も自由なのが通常です。

(1) 請負形態の報酬

請負形態の価格は、仕事単位に事前の請負者による見積もりか発注者により予算の価格により決められます。仕事は納品により終了し報酬は納品後支払われます。支払日は仕事直後払いや締日と支払い日の設定により支払われる場合などがあります。

雇用形態との相違で注意しなければならない点は、雇用の場合には適用される最低賃金が請負形態の場合は適用されないことです。内職という請負形態の場合は、雇用で法的に決められている最低賃金よりもはるかに低い契約で仕事をせざるをえない実態があります。請負形態とされたバイク便事業では届け先から届ける時間まで規定され、請負者の自由がなく条件も悪いため、請負ではなく雇用として認めろという訴えで裁判が起こされたことがあります。裁判では委託者の雇用責任が認められた例があります。

(2) 請負形態の仕事の分野

請負形態は多様ですが次のようなものがあります。

・デリバリー

宅急便、スーパーなどの配達、デパートの中元歳暮時期の配達、飲食の配達などです。直接雇用の時給制でやる場合もありますが、請負形態では報酬は出来高制が基本となります。

・職人的作業業務

営繕大工、排水管清掃、内装リフォーム、電気工事など専門技術を背景にした業務単位の仕事です。

・講師、コンサルタント、インストラクターなど

教える仕事などの分野で、業務提供場所は指定会場、顧客企業、学校などです。

・訪問サービス

訪問美容、訪問調理、運転代行、介護タクシーなどサービスを相手先への訪問形態で行うものです。

3.副業から転職への発展性および投資型副業

副業の中でも知識やスキルアップを目的にするのならば仕事の内容から選ぶことが必要です。知識やスキルのアップ、ノウハウの取得になるものは転職にプラスの場合もあります。転職ではやはり本業のキャリアが軸になるので副業の仕事の選択では本業と全く無関係のものは避けた方が良いでしょう。営業関係であればマーケティングやセールス手法にプラスになる仕事や仕入で参考になるルートなどです。製造・制作関係であれば管理手法や製造工程、流通などです。隣接する分野などが参考になります。

また、副業には雇用でもなく請負でもなく、自ら行う不動産投資、金融投資や小規模起業に関するものもあります。不動産投資、金融投資は一定の投資が必要となりますが本業との両立がしやすい分野です。不動産投資ではまとまった資金が当然必要となります。投資資金不足で借入金を投入する場合はかなりのリスクがあります。シェアハウス投資で不動産投資会社が不正をし、銀行が多額の融資をしたが投資物件からのリターンがなく、投資家が融資返済できない事件などもありました。

まとめ

人手不足のため簡単に仕事が見つかる時代です。雇用型の副業は人材派遣も含めて多数求人があります。スマホでも簡単に1日単位で仕事が見つかります。副収入目的だけでしたら問題はありませんが、副業としてある程度専門性を身につけるとかノウハウを知るなどの目的がある場合は、目先に追われずに自分のキャリア形成の観点も忘れずに持つ必要があります。

請負型の副業では最低賃金の保証がありませんので事前の検討、情報収集が必要です。実際にやってみると効率が悪かったり単価が低かったりし、最低賃金に満たない場合もあります。また、支払いが後払いになりますから回収リスクがあります。支払日がはっきりしない、支払時期なって値切られる、クレームで支払いがないなどのトラブルが発生する場合があります。もちろん反対に雇われている以上に儲かるビジネスもあるでしょう。