複業とは文字通り複数の業務を行うことです。会社内の仕事でも会社の指示で複数の仕事を兼務する場合があります。これは兼業もしくは複業と言っても良いでしょう。フリーランスの人であれば複業は実際に多様に行われています。セミナー講師であり執筆家であったり、フラワーデザイナーでありブライダルコンサルタントであったりしています。資格を活かしたパート勤務でも、看護師有資格者が介護施設で仕事をし、かつ並行してクリニックで仕事をするような形態です。サラリーマンでも本人の意識次第で、たとえ社外の仕事でも自分の能力開発、キャリア開発のための複業は可能です。
1.労働者にとっても、企業にとっても、プラス効果のある副業・兼業
労働者の副業・兼業は、スキル、知識、情報、人脈の取得・収集で、企業にとってもプラスということについては、厚生労働省の「副業・兼業促進に関するガイドライン」でも次のように指摘していますので一部を抜粋します。
【労働者】のメリット:
- 離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、労働者が主体的にキャリアを形成することができる。
- 本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができる。(以下略)
【企業】のメリット:
- 労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる。
- 労働者の自律性・自主性を促すことができる。
- 優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。
- 労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる。
厚生労働省 「副業・兼業促進に関するガイドライン」
上記で言われているように、社内ではできない分野のスキルを身につけたり、社内にはない知識、情報、人脈を得ることは自分にとっても企業にとってもプラスです。副業を認めている企業、副業を推進しているほどではないが完全否定もしていない企業では、プラス効果のある複業をやってもいいかと打診したり、やらせて欲しいと申告する方法があります。副業を解禁していない企業でも聞く耳はあるのではないでしょうか。
2.複業の分野
労働者にとって複業の可能な分野には次のようなものが考えられます。労働時間外で可能な点が前提となります。
IT、オンライン系ビジネスの分野で次のようなものがあります。
(1) 在宅ワーク、オンラインワークが可能な分野
ネットショップ、ネットマーケティング系
ネットショップの企画運営、ネット広告事業、eラーニング、その他のオンラインサービス(スカイプを使ったオンラインコンサルティング、オンライン占い、出会い系など)
技術系
システム設計、プログラミングなど
デザイン系
WEBデザイン、イラストレーターなどを使った電子カタログ・チラシ制作、イラスト制作、コミック制作など
ライター系
WEBサイト・ブログ記事執筆など
コンサルティング系
各種コンサルティング、アドバイス業務など
その他専門サービス系
翻訳、通訳の語学サービスなど
(2) リアルワーク分野、土日ビジネス分野
リアルの作業でないと成立しない分野の仕事です。時間的には労働時間外になり、土日、夜間早朝などの空き時間活用型になります。リアルビジネスの強みは顧客との人間関係が生まれることでリピートし、価格も相場に応じた額を要求しやすいことです。価格相場よりも少し安めで勝負していけば副業としての採算は取れます。
サービス系
デリバリー、運転代行、個別指導(子どもの家庭教師、大人のカルチャーレッスン、英会話レッスン、ペーパードライバーのための運転指導など)、訪問美容、ネイルサロンなど多様なものがあります。
本業自体が専門的技術的分野の会社に勤めている人の場合など、本業の能力を活かした分野では、プロとしての専門知識や技術を土日限定で安く提供するというのが売りになります。企業の経理マンによる経理指導・記帳代行・決算処理、建築設計技術者のリフォーム住宅設計、パソコンに詳しくIT企業に勤めるSEがパソコンの個別指導をするレッスン、商社や海外勤務経験で語学力がある人の語学レッスン、食品関係の仕事の人による料理指導、など極めて多様な分野で可能です。
企業の業務に関連しなくても、特技があれば顧客も認めてくれる可能性があります。パソコンの修理や自宅内施工、家電の取り付け修理、また、女性ならではの分野で整理収納などがあるでしょう。
サービス提供の場所の問題も、相手の自宅、自分の自宅、公共会場などを使用することにより解決できます。特に重要なことは自分の都合の良い時間を顧客に考慮してもらえるように調節可能な点です。
また、人に気に入られることがポイントの接遇的サービスの仕事もあります。高齢者向けの買い物代行、車椅子散歩支援、話し相手、安否確認、掃除などの受託のポイントは相手に気に入られることで、気に入られればリピートします。
ショップ系
配偶者を代表にした各種店舗、観光地での土日飲食店などがあります。
営業系
営業系の外販などです。
職人型製造・制作系
職人的技術による工芸品、美術品、衣料品、アクセサリーなどの宝飾品、嗜好品、食品などの製造・制作などです。
チームなどでの協同事業系
協同作業でないとできない分野などです。
3.企業にとっても有益な複業分野
企業にとっても役に立つ有益な複業分野では、前述した1の「労働者にとっても、企業にとっても、プラス効果のある副業・兼業」の、【企業】のメリット:「① 労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる。④ 労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる」の点があります。
多くの業種では、IT、オンライン系複業能力が有力でしょう。一部業種では、営業ルートの拡大や新事業・新商品開発での外部のルート開発、商品アイデア及びそれらにつながる人脈の拡大が有益でしょう。
4.企業にとってもPR効果のある社会貢献型複業
企業も私的利益追求ばかりではなく、本業ではできないが社会に貢献する役割は、企業の存在意義からも当然持っています。社会貢献できれば、企業の存在意義が社会に認められ企業価値が上がることは経営者もわかっています。企業経営ではCSRという企業の社会的責任をまともな経営者、企業であれば認識しているはずです。大企業であればすでに確立した分野ですし、中堅企業でもベンチャー企業でもそうでしょう。
企業の社会貢献型事業分野では、環境問題、食品廃棄物問題、プラスチック廃棄物問題、製品リサイクルなど多様です。これらの事業を社内で提案しプロジェクトと並行して社内兼業スタイルで複業化する方法もありえます。これらの事業を企業の支援を得ながら行うことは自身の能力開発、キャリア開発になり、また、企業にとってのPR効果があります。
社員の積極的な提案は前向きな意識の強い経営者や企業には好まれます。提案を通して社長、幹部と話す機会もあるかもしれません。新規事業開発や企画や広報に関心のある人にはプラスです。社内での自分の評価を高め、希望する部署への異動、新規事業開発の提案と異動、昇進などのチャンスも生まれてくる可能性があります。
まとめ
複業の目的には、自分自身にとっての、副収入、自分自身のやりたいこと、能力・キャリアの開発以外に、会社が本業ではできない分野への提案を通して会社公認の複業を行うこともありえます。副業という文字を使う場合は今までは個人の副収入目的の場合が多かったと思いますが、これからは複業による能力・キャリアの開発を軸に、個人だけの視点ではなく企業との接点づくりもありえます。企業にとっても個人の複業効果に目を向け活用してほしいものです。